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短編小説「君と、中学の夏をー」Chapter 1
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 ある田舎町で、中学二年生の七疾は自転車を漕いでいた。夏の、冷たい、独特な、あの風を受けながら。


 立ち漕ぎしながら、風を感じて、夏を思い浮かべる。それが、夏の登下校中の頭の中。登下校は行きだけで約一時間。右を見ても、左を見ても、田んぼしかない。とくにこの時期は、気持ちのいい緑色が元気に光っている。田んぼには水が引かれていて、今のこの時期が一番田んぼっぽい。いかにも田舎な風景だが、自分はこの町を好んでいる。のびのびと生きられて、特に縛られない。地震以外の災害が少なく、地震さえも一年に一回来るか来ないか、来たとしても震度は1や2ぐらいでとても平和で何もないゆったりした町だ。だからこそ自分は好んでいる。都会へ行きたいという願望はない。人の少ないこの町は、近所に人がいないが、学校の登下校中におばあちゃんやおじいちゃんとすれ違うので、少し学校の話をしたり、いいときは何かもらえたり、と人と人との関わりが非常に豊かだ。陽菜ともそう。



*****



 七疾と同級生の陽菜は、ガードレールがない川沿いを、斜め下を向きながら歩いている。機嫌など関係なく、こうやって歩いている。


 下を見ながら、あの気持ちのいい風を受けると、今日あった嫌なことは流されて飛んでいく。ただし、それは家に帰ったらすぐ戻ってくる。

2024/01/01 00:00

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